高校生の「やってみたい」をかなえる!「roots」に迫る
京都府北部の日本海に面し、「海の京都」とよばれるエリアに属す京丹後市。白砂の美しい浜辺、透き通った丹後ブルーの海が広がり、風光明媚な名所も点在しており、ユネスコ世界ジオパークに認定された豊かな自然に恵まれたまちです。伝統的な絹織物「丹後ちりめん」や機械金属加工など世界に誇る技術が集積するまちですが、ほかの多くの地方自治体と同じように、人口減少、特に若者の市外への流出が課題となっています。
京丹後市には大学がないため、高校卒業後、進学を希望する学生は、市外に出ていくこととなります。進学・就職などを合わせると、京丹後市を離れてしまう若者の割合は9割を越え、市が直面している人口減少の大きな要因となっています。そこで、京丹後市では、「本市との関係性を築き、本市への新しいひとの流れをつくる」を京丹後市まち・ひと・しごと創生総合戦略の基本目標に掲げ、様々な施策を展開しています。そのひとつが、企業版ふるさと納税の寄付対象事業として推進している「京丹後市未来創生人材育成プロジェクト」です。今回は、「京丹後市未来創生人材育成プロジェクト」の軸となる「京丹後市未来チャレンジ交流センターroots(以下、roots)」の目的や成果、そして企業版ふるさと納税への思いについて、市長公室政策企画課主任の篠原佳奈さんと市長公室ふるさと応援推進課主査の増馬武彦さんに話を伺いました。
取り組みが評価され、2022年グッドデザイン賞を受賞
2022年10月、高校生や地域の方が集まり、新しいチャレンジができる居場所として京丹後市峰山町にrootsが開設されました。広さ10坪足らずですが、相談員が常駐し、高校と自宅を往復する生活になりがちな高校生が、自分の好きを見つけ、開示できる場所になるように、また「やってみたい」ことをかなえる取り組みを進めています。年間平均約2,400人、開設以来のべ約1万人が来訪しており、企画・実施した総プロジェクト数は249(2024年12月現在)になります。
「rootといえば、「やってみたい」カードの壁。「やってみたい」ことを自由に付箋に書き、貼ることができる壁です。この壁をきっかけに、高校生を中心に大人を巻き込み、「やってみたい」ことを実現しています」と篠原さんは話します。
2022年には、「地域の高校生のやりたいことを可視化したこと、実際に様々な企画や活動が実現していること」などが評価され、公益財団法人日本デザイン振興会が主催する「2022年度グッドデザイン賞」を受賞しました。
「やってみたい」を現実に!
高校生の「やってみたい」ことは多岐にわたります。廃校の小学校を活用し、物販販売や写真展の開催などを行うイベント「Rainbow School」の開催や、rootsのロゴマークの制作、rootsに設置するデスクのデザイン・制作など、いままで、実施されたプロジェクトは249件(2024年12月現在)に及びます。
「ほかにも、地元の美容室などとコラボレーションし、「だからrootsでメイクする」というイベントを企画し、気軽にメイクについてふれ、学ぶきっかけを提供しました。また、コスプレをもっと知ってもらいたいという思いからコスプレイベント「ルーコス」を開催しました。高校生ならではの自由な発想で様々なプロジェクトが発案・実現され、市の活性化につながっています」と篠原さんは語ります。
常駐する相談員は高校生に寄り添い伴走に徹するスタンスで
「rootsは教育施設ではないので、高校生の主体性を大切にしています。高校生に対して近道を示すことは簡単ですが、自らが取り組みたいと思うタイミングまで待つことが大切です。正解や成功に導かないように努め、伴走しています」と篠原さん。また、rootsを卒業し、地元から離れ、進学・就職してもなお、帰省した際には、立ち寄ることができる場所でありたいと話します。2024年夏には、rootsの卒業生が、趣味である写真を活かし写真展を開催しました。
rootsとは、「高校生と地域の方々が集い、新たなチャレンジができる居場所」です。創設時に掲げたそのコンセプト通り、rootsは挑戦する高校生に寄り添い、歩みを続けています。
寄付を通じて絆が深まり、企業と市との関係性を築いていきたい
増馬さんは「京丹後市ならではの事業を展開したいと考え、本プロジェクトを事業化しました。寄付をきっかけに、企業と市の絆が深まり、関係性を築いていきたいです」と語ります。
寄付企業に対しては金額に応じて「やってみたい」カードへの記載やroots内にある企業パネルへの掲載、現地で高校生との交流会に参加できるなど、独自の自治体アクションを設定しています。
「当市では、引き続き本プロジェクトの寄付募集を行っています。京丹後市を知ってもらうきかっけとして、またそのツールとして活用していただきたいです」と締めくくってくれました。
語り手
市長公室ふるさと応援推進課主査の増馬武彦さん、roots相談員の岡部萌香さん、root相談員の高見亮摩さん、市長公室政策企画課主任の篠原佳奈さん
自治体 |
京都府 京丹後市 |
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