累計5億円超の寄付を集めている高森町の成功の秘訣
トップセールスや共感をよぶプロジェクトが奏功
地方創生プロジェクトへの資金調達手段として注目される企業版ふるさと納税は、地方自治体にとって非常に重要な役割を果たしています。その成功事例の一つが、5年間で累計5億円超の寄付を集めた熊本県高森町の取り組みです。町長による積極的なトップセールスや共感をよぶプロジェクトの企画が功を奏し、震災復興や教育分野で注目を集めています。
過去5年間の寄付受け入れ実績
今回は、高森町で企業版ふるさと納税を担当する森隆志さんにお話を伺いました。寄付を受けることへの強い思いをもち、企業との信頼関係を築きながら制度を活用し、確かな実績を築いています。
これまでの実績
2019年度 1社 1,600万円
2020年度 4社 1億4,760万円
2021年度 40社 2億1,044万円
2022年度 17社 7,920万円
2023年度 21社 4,720万円
森さんは「私自身は2022年度から担当しているのですが、前任者の時代から企業に直接働きかけたり、プロジェクトの認知度を高めるPRを行ったりと、寄付を得るために様々な取り組みを進めてきました。その結果、多くの企業から多額の寄付をいただいております」と述べ、その成功の秘訣と未来への展望を語ります。
トップセールスと、必ず添えるひとこと
「成功の要因の一つに、自治体のトップである町長が自ら積極的にセールスを行い、企業との交渉を直接進めていることです。町長はアグレッシブで、私たち職員が知らない間に企業とつながり、寄付の話をまとめてくることも多々あり、その行動力にはいつも驚かされています」と森さん。トップ同士の交渉は話がまとまりやすいということもあり、その成果には目を見張るものがあるそうです。
しかし、それだけではありません。各部署が企業と接点をもつ際には「企業版ふるさと納税を受け付けています」というひとことを必ず添えよう徹底しているとのこと。「これは前任者が始めた取り組みで、当初はよく分からないままひとことを添えていましたが、続けることで企業にも町内職員にも制度の認知が広がっていくのを実感しました」と森さんは振り返ります。
目を引くプロジェクトの工夫
企業からの信頼を得るためには、寄付金の使途を明確にし、企業がCSR活動として取り組みやすいプロジェクトを設定することが鍵となります。
特に注目されたのは「熊本地震からの創造的復興!南阿蘇鉄道高森駅周辺の再開発と熊本都市圏へのアクセス強化プロジェクト」です。このプロジェクトは、2016年の熊本地震で被災した鉄道インフラの復興に取り組むことで、多くの企業から共感を得ました。「2023年には全線開通を果たし、ご支援くださった企業の方から、『南阿蘇鉄道に乗りました』とのご報告もいただき、とても感動しました」と語る森さん。
また、エンタメ業界と連携した「熊本県立高森高校の漫画関連学科設置プロジェクト」も話題をよびました。この取り組みは、地域活性化に寄与しながら、次世代の人材育成を目指す内容で、全国的なメディアでも取り上げられるほどの注目を集めました。
プロジェクトの成功には、内容が分かりやすく、寄付金の使い道が明確であることが重要です。高森町では、教育や子どもに関するプロジェクトにも力を入れ、寄付が未来への投資であることを強調し、企業がプロジェクトに共感しやすい環境を整備しています。
真摯な姿勢が企業からの信頼につながる
「プロジェクト情報を公開して終わりではなく、こまめに進捗状況を更新し、プロジェクトが動いていることを企業の皆様にご報告しています。町としての真摯な姿勢を示すことで、企業からの信頼を得て、継続的な支援を受けられるように配慮しています」と森さん。実際、一度寄付をしてくれた企業が、翌年も寄付を続けるケースが多いそうです。
さらに、感謝状の贈呈や高森町ホームページでの紹介、地元メディアでの発信を通じて、寄付企業への感謝を示しています。こうした取り組みは、企業にとっても自治体とのつながりを深めるきっかけとなり、双方にとってメリットのある関係を築く助けとなっています。
自治体と企業の“縁”を築くきっかけ
森さんは「企業版ふるさと納税は単なる資金調達の手段ではなく、自治体と企業の“縁”を築くきっかけであると考えています。寄付を通じて町を応援する企業は、地域のファンであり、仲間でもあります。この関係を大切にすることで、自治体は持続可能な地域活性化を目指すことができます。また企業にとっては、地域活性化や次世代の育成といった社会貢献活動に取り組む機会となります」と熱く語ります。
高森町の成功事例は、今後も多くの自治体にとって、企業版ふるさと納税の活用における指針となることでしょう。
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語り手
高森町政策推進課
森隆志
自治体 |
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