生きた英語教育と公営塾で、次代を担う人材を育成する教育改革
河内町は茨城県の南端に位置し、水田が広がるのどかな農村地帯です。人口8,000人弱の小さな町であり、町内の学校は小中一貫校「かわち学園」の1校のみ。この町では、次代を担う人材の育成を目的とした教育改革が進められています。今回は、その取り組みについて河内町教育委員会の廣住貴志さんにお話を伺いました。
外国の歴史や文化を肌で感じる研修から、英語研修へ
河内町のグローバル教育の歴史は長く、平成10年(1998)から中学生を対象に中国やモンゴル国、ヨーロッパなどで「海外派遣視察研修事業」を実施してきました。
「この事業は、海外における異文化体験の機会を提供し、国際理解を深めることを狙いとしていました。2015年度からは「中学生英語研修事業」として研修先をハワイにし、現地の中学生との交流を通じて、実践的に英語を学べる環境を整備。毎年20名程度の中学生が参加していました」と語る廣住さん。しかし、新型コロナウイルスの影響により海外派遣が困難となり、事業は中止となりました。
世界各国からの留学生との交流で、中学生の表情が変化
2023年度からは国内での国際交流事業として「河内グローバル体感キャンプ」を開始し、世界各国からの留学生と共にフィールドワークを行い、異文化理解と英語力の向上を図りました。参加者は外国人の視点から日本の魅力を再発見し、英語や海外文化への関心を深める貴重な機会を得ることができました。しかし、参加者数が想定よりも少なく、費用対効果を考慮した結果、2025年度は事業を休止することが決定したのです。
「企画から携わり2年間、私も担当として参加しましたが、3日間一緒にいると中学生の表情に変化が現れ、留学生との接し方も変わっていくことが印象的でした。キャンプは惜しまれつつも休止となりますが、こうした機会は子どもたちにとって貴重なものだと考えています」と振り返る廣住さん。
こども園と小中学校にALTを配置し、世界に羽ばたく人材を育成
新しい取り組みとしては、フィリピンの町市と姉妹都市友好協定を結び、2025年4月からALT(外国語指導助手)を新たに配置することになりました。現在、町の学校には1名のALTが在籍していますが、さらにフィリピンから2名を受け入れ、こども園と学校に1名ずつ配置し、合計3名体制となります。
「この取り組みでは、幼少期から外国人と接して、英語を自然に学べる環境を整えます。特に小さな子どもたちにとって、英語に対するハードルを下げることが重要であり、ALTと日常的にふれあうことで、英語が特別なものではなく、身近な言語として親しめるようになります」と廣住さん。
河内町は成田国際空港に近い立地ということもあり、将来の就職を考える上で英語力が重要なスキルとなります。このような英語教育の取り組みを通じて、町から巣立った若者が再び地元に戻るきっかけにもなることが期待されています。
数学と英語を学べる公営塾で学習環境格差を是正
また、2025年5月からは「公営塾事業」がスタートします。河内町には民間の塾がなく、町外に通う場合は保護者の送迎負担や経済的な負担が大きくなっています。そこで、町内の公民館を活用し、無料で週2回、1回に英語と数学を1時間ずつ学べる場を提供することになりました。
「事前調査では、町内の中学生約120名のうち70名ほどが参加を希望し、予想を上回る関心が寄せられました。進学塾というよりは、学習習慣の定着を目的とし、家庭での勉強が難しい生徒にも学びの場を提供することを重視しています。将来的には、小学生にも対象を広げることも視野に入れており、事業の広がりは無限にあると思っています」と意気込みを語る廣住さん。
小さな自治体だからこそ、できることがある
「教育改革の継続には多くの課題がありますが、河内町は小さな自治体だからこそ、柔軟な取り組みが可能であると考えています。また、財政的な課題を克服するため、企業版ふるさと納税も募っており、ご寄付くださった企業の皆様には感謝の印として寄付額に応じたお礼をさせていただきます」と廣住さん。
ホームページへの企業名掲載や感謝状送付のほか、100万円以上のご寄付をいただいた場合には町長との意見交換会を設けたり、1,000万円以上のご寄付の場合には紺綬褒章への推薦を行うといった自治体アクションを用意しています。
「町の規模は小さいですが、その分スピーディーな意志決定が可能であり、多くの方の意見を反映しやすいという利点がございます。企業の皆様からのご意見を参考にさせていただく機会を用意することも可能ですので、お気軽にご相談いただければ幸いです」と廣住さんは話を結びました。
語り手
河内町教育委員会
廣住貴志さん
自治体 |
茨城県 河内町 |
---|